ギリシャへ行ってきました。 何をしに行ったかというと、昼寝をしに行ってきました。 ギリシャはラテンの国なのでシエスタの習慣があります。 シエスタとは早い話がお昼寝タイムのこと…全国民がこぞって昼寝をします。犬も猫も昼寝をします。 ギリシャはじつに昼寝向きの国でした。昼寝好きの夫婦にはまさにうってつけの国でした。 スペインが昼寝の本場なら、ギリシャは昼寝の穴場といえるでしょう。
自宅のベッドを発って、ちょうど24時間後…夢のはじまりとなる
シンタグマ広場のアテネプラザ・ホテルに到着しました。 遠くにライトアップされたパルテノン神殿が見え、「はるばるギリシャへ来たんだなぁ…」という実感が、
眠気と共にこみ上げてきます。
とはいっても、シンタグマ広場は周囲を10階建ぐらいのオフィスビルに囲まれているので、
部屋のバルコニーから望むパルテノンは斜め前方のビル越しでした。
ビルの屋上につくられた特設ビアガーデンに見えなくもありません。
「2500年前の歴史的建造物を屋上ビアガーデンに例えるなんて…」と怒られそうですが、
もし本当にあの場所で生ビールが飲められるなら、私は夜な夜なアクロポリスの丘へ繰り出し、 ヘベレケになるまで飲んだことでしょう(もちろん、夜間は入場できません)。
聞くところによれば、この「へべレケ」という言葉… 響きは日本語っぽいですが、語源はなんとギリシャ語で、しかもギリシャ神話に登場する 「青春の女神ヘーベ」からきているというから驚きます。 女神ヘーベは全知全能の神ゼウスの娘さんで、あのヘラクレスの奥方でもある女性… そんな彼女が神々の宴席で神酒のネクタをお酌してまわることを、 ギリシャ語で「ヘーベ・エリュエーケ」というらしく、それが縮まって日本ではヘベレケになったのだとか。
異国に着いた興奮を冷蔵庫の冷えたビールで静め、 明日からのシエスタに備えてこの日は就寝…翌日は夕方5時の便でサントリーニ島へと向かいました。
サントリーニ島の人気リゾートホテルは300メートルの断崖の上に、
洞窟のようなヴィラがひしめきあうように建っています。 滞在先のホテル「サンロックス」はフィロステファニーという街にあり、
島の中心地フィラまで歩いて20分の距離でした。
サントリーニ島の徒歩20分は日本の徒歩20分より短く、
断崖からの絶景を眺めて歩けばすぐですし、 フィラの喧騒から逃れるにはちょうどいい距離だったと思います。
サンロックスは眺望に恵まれた、快適で清潔な、まさに昼寝向きのホテルでした。 予約を取るのが難しい人気のホテルで、 他の旅行社から「サンロックスはやはり無理でした…」と断られた後にもかかわらず、
パーパスさんのお力添えでこの春完成したばかりのエクスペリメンス・スイートに3泊することが出来たのです。
ベッドサイドにはジャグジー完備。床は黒い砂岩のタイル。 それらがオリエンタル調の家具と自然に調和しています。 テラスと部屋を隔てる壁一面の「窓ガラス」兼「出入り口」はフルオープンになる可動式で、 窓を折りたたんで全開にすれば、室内とテラス、そしてエーゲ海独特の青い海と空が一体となり、 部屋は心地のよい開放感で満されます。 そして、その開放感が私たちを快眠へといざなうのです。
「ただちにギリシャの作法どおりシエスタを敢行したい…」 でも、到着は夜の7時を過ぎていました。もはや正式なシエスタとは呼べない時間です。 ギリシャでの初シエスタは明日の楽しみにとっておき、
その夜はサンロックスから徒歩5分の所にある「バミリオ」という、
赤い外壁とイルカの看板が可愛いらしいレストランへ行きました。
今回の旅行では色々なレストランやタベルナ(食堂)でギリシャの郷土料理を食べましたが、
何の予備知識も持たずに入ったこの店のムサカとタラモタラタが一番美味しかったように思います。
ムサカは油で揚げたナス、ジャガイモ、牛挽き肉のミートソース、チーズを交互に重ね、
ベジャメルソースを敷いてオーブンで焼いたギリシャ風グラタン料理のこと。 「なにがギリシャ風なの?」と尋ねられても、「四角く切ってあるところ…」としか答えようがなく、
味もチーズたっぷりのミートソース風ナス・グラタンでした。
タラモサラタはたっぷりのタラコにタマネギ、ジャガイモ、オリーブオイル、レモンを加えてペースト状にしたもの。
私たちが日ごろ慣れ親しんでいるタラコの味そのままで、タラコの含有率が高い気前のいい店もあれば、
ジャガイモやタマネギで増量をはかる店など様々でした。 これをタラモサラタと一緒に出されるパンに塗って食べますが、
これも切ったパンをそのまま出す店と、ちゃんと焼いたアツアツのパンを出す店に分かれます。
私はアツアツ賛成派ですが、総じてアツアツ系の店の方が味は上のように感じました。
ただし、アツアツ系は料理の値段も上がります。 タベルナとレストランの違いはパンのアツアツの違いである」と断言する者さえいます。
ギリシャのタベルナやレストランは、タラモサラタのタラコ含有率とパンの焼き具合に比例して
値段も高くなる傾向にあるのかもしれません。>
今回の旅行は昼寝が目的なので、夕方は必ずシエスタをしにホテルへ戻りました。
部屋のテラスでビールや島特産の白ワインをあけ、サンセット前の夜8時に再び起床。
エーゲ海に太陽が沈むのを見届けてから、9時過ぎにレストランやタベルナへ繰り出し、夜中の12時に戻る。
この生活パターンはアテネでもず〜っと同じでした。 このシエスタのおかげで旅行中は時差呆けゼロ…
1日1回、変な時間に昼寝をしているのですから、どこでどう呆けていいのか体の方も分からなかったのでしょう。
朝食はプールサイドのカウンター席で食べますが、 一枚の絵のように美しい絶景と潮風をスパイスに味わう食事は何よりの贅沢でした。 こう書くと、毎日昼寝して酒を飲んでいたみたいですが、実際に毎日昼寝をして、酒ばかり飲んでいました。
それ以外でしたことは…え〜っと、日本からレンタカーを予約したので、
サントリーニ島では車でドライブに行きました。
予約はPPJの高橋さんがご好意でしてくれたものです。
エーゲ海最高の夕日といわれるイアの街や、アクロティリー遺跡、 ギリシャワインの産地のひとつ、ピルゴス村のサント・ワインズというワイナリーなどを車でまわりましたが、 期待以上によかったのが、このサント・ワインズでした。
ワイナリー所蔵のワインが1杯1.5ユーロでテイスティングが可能ですし、
気に入ったワインが見つかれば買って帰ることもできます。 もちろん、ワインを買って帰らないこともできます。ワイナリーの人に気がねする必要はありません。 試飲だけでも肩身の狭い思いは皆無なのです。 そんなユルメの雰囲気が嬉しいですし、テラスでワイングラスを片手に座っていると、 アルコールで少し火照った頬を海風が優しくなぜていきます。 しかも、フィラの街を右手に望む、テラスからの眺望はタメ息がでるほど美しさでした。
サント・ワインズ、けっこうお薦めです。
ここで旅の前半終了…旅行5日目は早朝6時の便でアテネにUターンです。
ホテルは初日と同じアテネプラザ・ホテル…ここにもう3泊しました。
屋上ビアガーデン状態だったパルテノン神殿と、ついに間近で対面する時がやってきたのです。
6月でもギリシャの日差しは強く、太陽が首の後ろのところをジリジリ焦がします。
ギラギラ照りつける太陽と、埃まじりの乾いた空気。列をなす大勢の観光客。 歩くスブラキと化した私たちは、それでもアクロポリスの頂上目指して歩きました。
パルテノン神殿が建てられたのは三方を断崖に囲まれた高さ70メートルの平らな場所で、
アクロポリスの丘の上では遺跡以外、視界に入る建造物はありません。
360度、ぜ〜んぶ神殿。
「私は場違いなので…」と博物館が遠慮して地下に隠れています。 「私らだけが残るわけにも…」と、しぶしぶ売店とトイレがつき従っています。 そんな中でパルテノン神殿は、アテネのシンボルを顕示するように建っていました。 その風格、押し出し、老獪、どれをとっても遺跡の王様にふさわしいものばかりです。
ドーリス式の力強い列柱が、涼しげな濃い影を地面に描いていました。
ソクラテスが柱の陰で昼寝をしていても不思議じゃない光景でした。
「パルテノンさんって世界遺産のシンボルマークになるくらい、ユネスコと太いパイプがあるらしいわよ」
エレクテイオンの屋根を支える6体の美しい乙女像たちは噂話に夢中です。
「でも、UNESCO って6文字でしょ? パルテノンさんの正面の柱の数って8本じゃなかったっけ?」
「もしかしたら、あのマークのモデルは腹違いの弟のヘファイストス神殿の方じゃない?」
「だって柱が6本だし、彼の方がイケてるもん」
古代がそのまま薄茶色に染まって残るアクロポリスの丘は、 そんなささやきが聞こえてきそうなほど、じつは生き生きと輝いているのでした。
そんなギリシャで一番驚いたこと…それは野良犬の数です。
街は大型の野良犬だらけで、ちょっと見回せば2、3匹はいたでしょうか。
野良犬はオリンピックの時に一度捕獲され、ワクチン接種や避妊手術をした上で、 目印となる青い首輪をつけて再び街に放されたといいます。 彼らは政府公認の野良業をいとなむ犬たちでした。
政府の後ろ盾をもつ野良犬がいる国なんてギリシャぐらいのもの…捕獲後、 再び街に放された彼らは、ギリシャの大らかな国民性をアピールするのに一役かっているのです。 政府公認という立場にあるので、彼らは公園や人通りの多い路地はもちろん、 店の中でも人間に遠慮することなく、平気な顔で寝ていました。
街の警備、及び防犯に心をくだく様子もなく、ひたすらホームレスライフを謳歌しているようです。
シエスタのあるギリシャは、犬の昼寝も堂にいったものでした。
無気力、無防備に眠るその姿には感動さえ覚えます。
妻以外であれほど幸せそうな顔で眠る生き物を、私は初めて見ました。 しかも寝ているところを起こしてもあの犬たちは、妻のように吠えたり、噛み付いたりしないのですから…
今回のギリシャは天候に恵まれ、シエスタにも恵まれた夢のような旅行でした。
そんな素晴らしい私たちの昼寝旅行にご尽力いただいた、PPJの高橋さんには感謝の言葉もありません。
お土産もありません。なので、この場をお借りしてお礼を述べさせていただきますね。
ありがとうございました。
谷村伴緒 様 谷村政美 様
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